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東京高等裁判所 昭和50年(ラ)552号 決定 1975年12月22日

抗告人 株式会社中村商事

相手方 下田建設株式会社

主文

原決定を取り消す。

理由

一、本件抗告の趣旨及び理由

別紙記載のとおりである。

二、当裁判所の判断

(一)  本件記録によれば、原告(本件相手方)下田建設株式会社、被告(本件抗告人)株式会社中村商事間の東京地方裁判所昭和五〇年(手ワ)第一、三三一号約束手形金請求事件につき同裁判所が昭和五〇年九月一二日言い渡した仮執行宣言付判決にもとづき、相手方は、同年九月二〇日、同裁判所に債権差押及び転付命令の申請をし、同裁判所は、同日、本件(頭書)債権差押及び転付命令を発し、同命令正本は、同月二三日、第三債務者である青和信用組合に、また同月二五日、債務者である抗告人にそれぞれ送達されたこと、抗告人は、前記仮執行宣言付判決に対し同裁判所に異議の申立をし、かつ右判決にもとづく強制執行停止の申立をし、同裁判所は、同日、相手方に金九五〇万円の保証を立てさせて右判決にもとづく強制執行を本案判決があるまで停止する旨の強制執行停止決定をしたこと、および抗告人は、同年一〇月一日、前記債権差押及び転付命令に対し当裁判所に即時抗告の申立をし、同時に右強制執行停止決定正本を提出したことがそれぞれ認められる。

(二)  ところで、債権差押及び転付命令は即時抗告に服し、即時抗告申立期間及び同抗告申立後抗告裁判所における裁判があるまでは右債権差押及び転付命令はいまだ確定しないものと解すべきであり、したがつて、その限りにおいて同命令による強制執行はいまだ終了していないものというべきであるから、たとえ右命令が債務者及び第三債務者に送達されたのちにおいても、右命令に対し即時抗告申立期間内に即時抗告の申立がなされ、抗告裁判所に右命令の基本となつた債務名義にもとづく強制執行停止決定正本が提出されたときには、執行裁判所において債権差押及び転付命令を発する手続中に右停止決定正本が提出されたのと結局異るところはないものと考えられるので、抗告裁判所としては、右未確定の債権差押及び転付命令を結局違法として取り消すべきものである。

(三)  そうだとすると、前記二、(一)認定の事実関係からすれば右債権差押及び転付命令は結局違法として取消を免れないものといわなければならない。

よつて、本件抗告はじ余の点につき判断するまでもなく理由がある(なお、本件抗告中前記債権差押及び転付命令の申請の却下を求める部分は理由がない。)から、原決定(前記債権差押及び転付命令)を取り消すこととし、主文のとおり決定する。

(裁判官 安倍正三 岡垣学 唐松寛)

(別紙)

抗告の趣旨

東京地方裁判所昭和五〇年(ル)第三二八六号及び同裁判所同年(ヲ)第六一九一号債権差押及び転付命令はこれを取消す。

右各申請はこれを却下することの御決定を求む

抗告の理由

本件債権差押及び転付命令は昭和五〇年九月二五日債務者である抗告人に送達されたが、右債権差押及び転付命令の原因たる債務名義である東京地方裁判所昭和五〇年(手ワ)第一、三三一号約束手形金請求事件の手形判決の仮執行の宣言に基く強制執行は債務者の申請により東京地方裁判所昭和五〇年(モ)第七一、五八五号強制執行停止決定により停止せられて居り、又第三債務者に於て差押るべき債権が無いので本件抗告の趣旨に記載の如き御決定賜りたい。

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